世界の主要なテレビ、新聞、雑誌などのマスメディアで報道されたサイケデリック・リサーチに関する番組や記事の要約です。
2008年
- タイムズ(イギリス) "Can illegal drug help depression?(違法ドラッグでうつ病を治せるか)" 2008年8月23日
- インデペンデント(イギリス) "LSD cured my headache(LSDで頭痛が治った)" 2008年10月7日
- CNN(アメリカ) "Ecstasy may help PTSD(エクスタシーがPTSDに効く可能性)" 2008年11月13日
- エコノミスト(イギリス) "Agony and ecstasy(苦悶とエクスタシー)" 2008年12月18日
2009年
- シュピーゲル(ドイツ) "Swiss Psychiatrist Fights Fear with LSD(スイスの精神科医、LSDで恐怖心と戦う)" 2009年7月24日
- ニューズウィーク(アメリカ) "The Psychedelic Solution: Drug taboos may block a potential treatment for cluster headaches, one of the most painful conditions known(サイケデリックな解決策:激痛を伴う群発頭痛の治療可能性を妨害しかねないドラッグタブー)" 2009年10月14日
- ナショナル・ジオグラフィック・チャンネル(アメリカ) "Inside LSD" 2009年
2010年
- ニューヨークタイムズ(アメリカ) "Hallucinogens Have Doctors Tuning In Again(もう一度、医者が幻覚剤にチューン・イン)" 2010年4月11日
- CNN(アメリカ) "Hallucinogens could treat ailments(幻覚剤で病気を治せるのではないか)" 2010年4月23日
- BBC(イギリス) "Ecstasy 'may help trauma victims’ (エクスタシーがトラウマを癒す?)" 2010年7月19日
- サイエンティフィック・アメリカン(アメリカ) "Psychedelic Drugs Show Promise as Antidepressants(抗うつ剤として見込みのあるサイケデリックドラッグ)" 2010年8月19日
"Can illegal drug help depression?(違法ドラッグでうつ病を治せるか)"
2008年8月23日
アマンダ・フェルディングさんが自腹で設立したベックリー・ファウンデーション財団は、薬物政策の法改正、瞑想や呼吸法、LSDなどの向精神性薬物がもたらす変性意識の研究のために資金を提供している。
フェルディングさんは、幼少のころから精神世界に関心を持ち、大学では宗教学を専攻した。そして60年代にドラッグ体験をする。ドラッグの医療への応用に興味を示すようになったきっかけは、LSDを合成したアルバート・ホフマンとの親交だった。
財団設立から5年が経過した今、やっと成功の兆しがみえはじめた。昨年、35年ぶりにLSDを人体に投与する実験の許可が下りたのだ。この研究はLSDが脳にどのように作用し、クリエイティブなプロセスを調節しているのかを調査するためのものだ。また別の研究では、LSDの脳内での血行促進効果を調べている。
大麻も研究対象だ。「ハイ」の生物学的な構造を調べ、脳のどの部分が活発になっているのかが解明されるかもしれない。
フェルディングさんは、決してドラッグの使用を奨励しているわけではないと強調する。単に、これらの薬物の医学的利用価値の調査に興味を持っているだけなのだ。
「人のために大きく貢献できる分野だと感じています。それが私の原動力になっています」と、彼女は言う。
"LSD cured my headache(LSDで頭痛が治った)"
2008年10月7日
群発頭痛に悩む男性、ハンドルネームFlash。彼がたまたま発見した新治療法は、幻覚剤だという。当初、群発頭痛持ちのコミュニティではバカにされた、彼の「奇跡の治療法」だが、近年、ハーバード大学医学部の科学者たちの調査でその効果が確認され、現在、臨床試験の許可を申請中だ。
群発頭痛は謎の病気である。その痛みは想像を絶する。慢性的な群発頭痛患者の中には、苦痛のあまり、自殺してしまう人もいるほどだ。Flashはこれまで様々な薬や治療法を試みたが、症状は一向に改善しなかった。彼はLSDが60年代に偏頭痛の治療に使われていたことを知ったものの、LSDを入手することができなかったので、マジックマッシュルームを試したところ、頭痛が治まってしまった。人生で最も素晴らしい瞬間だった、と彼は言う。
マジックマッシュルーム(シロシビン)やLSDの成分は、神経伝達物質セロトニンと似た構造をもつトリプタミン系物質である。実際、群発頭痛の治療に使われる薬、イミグランは、幻覚剤のDMTと化学構造が非常に似通っている。
ハーバード大学医学部のジョン・ハルパーン医師は、Flashのアイデアに興味を示している。規制薬物を使用するため面倒があるが、リスク以上にメリットがあると彼は言う。最大の難関は、製薬会社の参入だろう。シロシビンやLSDは特許が取れないうえ、処方対象の患者数が比較的少なく、リスクのある薬品の開発に大金を使うことを渋るためだ。
"Ecstasy may help PTSD(エクスタシーがPTSDに効く可能性)"
2008年11月13日
ゲール・ウェスターフィールドさんが、自身が受けたMDMAセラピーセッションの様子を録音したテープを聞かせてくれた。人生のほとんどをうつ症状に悩まされてきた彼女。幼少のころに暴行を受け、心的外傷後ストレス障害(PTSD)と診断された。そして、セラピーの一部としてMDMAを研究するマイケル・ミットホーファー医師に出会う。
MDMA、俗称エクスタシーは、脳内に神経伝達物質セロトニンを放出させる作用がある。セロトニンは気分や感情に関係する物質であり、警戒心を抑える、多幸感、落ち着く、といったMDMAの効果が、セラピーにうまく利用できるのではないかと考える医師たちがいるのだ。ミットホーファー医師の試験的研究には、21人の患者がかかわった。MDMAを服用した患者は、プラシーボを服用した患者と比べ、精神的健康状態に改善がみられた。さらに、特に大きな副作用は現れなかったということも重要だ。
MDMAセラピーを受けた後、子供のころからよく見ていた悪夢を見なくなった、とウェスターフィールドさんは言う。
"Agony and ecstasy(苦悶とエクスタシー)"
2008年12月18日
イラクで4年間を過ごした民間軍人の男性。ある日、乗っていた車が突然爆発、アルカイーダに襲われた。3ヶ月入院し、身体の傷は癒えたものの、悪夢を見るようになり自宅に引きこもった。
PTSD、心的外傷後ストレス障害は、フラッシュバックや不眠などの症状が長期間継続する精神疾患。治療は抗うつ薬の服用を中心に、ときに心理療法と組みあわせて行われる。しかし、慢性的なPTSD患者の1/4は回復の兆しがみられないという。
サウスキャロライナ州に住むウェスターフィールドさんは、子供の頃、近隣の住人に性的虐待を受け、大学生時代には知人にレイプされた。PTSDの診断を受けたのは10年前。様々な抗うつ薬を服用したが、治療は困難をきわめた。
精神科医マイケル・ミットホーファーが最近発表した臨床試験結果は期待のもてるものだった。彼の実験では、ウェストフィールドさんや冒頭の民間軍人男性を含む20人のPTSD患者に、心理療法とあわせて実験的な薬物が投与された。たった2回のセッションで、すべての患者が劇的な改善をみせたのだ。その薬物、MDMAは、通称エクスタシーと呼ばれる違法薬物だ。
60年代、ダウケミカル社の化学者だったアレクサンダー・シュルギンがMDMAに注目し、サイコセラピストのレオ・ゼフに紹介した。彼はこの薬をとても気に入って、アダムと呼び、アメリカやヨーロッパのセラピスト達に紹介した。80年代に入ると、若者たちがMDMAをハイになって遊ぶために使い始めたため、政府はすぐさま規制をかけた。MDMAのレクリエーション使用が爆発したのは規制後だ。国連は世界中で年間900万人が100トンのMDMAを消費していると見積もっている。
MDMAセラピーのフェイズI試験が始まったのは1992年だった。結果はポジティブであったものの、90年代半ばには、MDMAはいっそう物議をかもす薬物になってしまったため、フェイズII試験を開始できたのはやっと2004年になってからのことだった。
ミットホーファーの治療では、患者はソファに横になり、音楽を聞きながらトラウマを追体験するよう促される。ミットホーファーは、恐怖と防衛心がPTSDの治療を困難にしているのだという。MDMAはそのような感情をやわらげるため、心理療法が効果的に作用するのだ。
フェイズIII試験の開始は2年以上先になるだろう。しかし二つのフェイズIII試験が成功を収めれば、次のステップはMDMAの規制解除だ。ウェストフィールドさんはなるべく早く認可されるよう望んでいる。
"Swiss Psychiatrist Fights Fear with LSD(スイスの精神科医、LSDで恐怖心と戦う)"
2008年7月24日
ガンを患っている44歳のシュルツさんは、研究の一環として合法的にLSDを服用することを許可されている。この研究の目的は、LSDが心の病の治療に効果を示すかどうかを調べることだ。
2008年5月、スイスの小さな町で実験は行われた。治療室はリラックスした雰囲気で、赤いタペストリー、楽器、微笑んでいる仏陀の肖像画などが飾られている。精神科医のペーター・ガサーが、フォームマットに横になった患者のそばに座っている。
長い間、LSDやその他の幻覚剤の研究を再開するべく戦ってきたアメリカやヨーロッパの研究者たちが、ガサーの研究に期待をかけている。幻覚剤の心理療法へのカムバックには可能性があるように思える。アメリカ、イギリス、イスラエル、スイスで、エクスタシーやシロシビンを使用する臨床実験の許可が下りている。実験では、トラウマを負った退役軍人や、不安障害の患者に対する効果を調べる。
ガサーは、幻覚剤のセラピー利用を支持するスイスの団体の会長を務めている。彼は90年代初頭に、幻覚剤を併用するセラピーの訓練プログラムを終了した。当時のスイスでは、許可を取得すれば、そういったことが可能だったのだ。彼自身もコースの一環でLSDを服用した。
ドラッグの効き方は、どんな環境で使用するかに大きく影響されるという。「リラックスした雰囲気を築くように心がけています。患者たちがおとなしいのはそのためです。」ときにはセッション中に音楽を流し、ガサーは壁にかけてあるドラムを演奏することもある。今のところバッドトリップは一度も起きておらず、緊急時のために用意してある鎮静剤の出番もない。「注意深く扱えば、LSDは決して他のセラピーより危険なものではありません」
自己認識、セラピストとの信頼関係の構築。そのために要する時間の短縮と、その密度の濃さは、LSDを使わなければ成し遂げられないだろう。知覚の変容は愉快なことだが、それは二次的な現象なのだ。
ガサーの研究では、不安障害に悩む重病患者12人を治療する。そのうち8人は一度に200マイクログラムのLSDを服用し、1日がかりのセッションを2回に分けて行う。現在のところ治療を受けた3人すべてに良好な結果をもたらしている。LSDセラピーに深刻な問題はなく、効果的な治療法であることを最終的には証明したいとガサーは言う。
シュルツさんが胃がんを宣告されたのは2006年のことだった。これまでのような生活は二度と送れないという絶望感から、不眠に悩まされるようになった彼は、LSDセラピーを受けてから1年、再びフルタイムで働きはじめるまで劇的に回復した。トリップの最中、彼ははじめて、がんに対する悲しみと怒りをありありと体験した。「赤ん坊のように泣くことができたんだ」と、彼はにっこりして言った。
"The Psychedelic Solution: Drug taboos may block a potential treatment for cluster headaches, one of the most painful conditions known.(サイケデリックな解決策:激痛を伴う群発頭痛の治療可能性を妨害しかねないドラッグタブー)"
2008年10月14日
クラスターバスターズなる団体主催の群発頭痛会議がシカゴで開かれた。会議には、有効な治療方法がみつからず、その発作は強烈な痛みを伴うという群発頭痛に苦しむ人々が多数参加。その中には、信じられない治療法、サイケデリックドラッグのLSDとシロシビンに救われたという患者の声があった。LSDとシロシビンが群発頭痛の治療に効果を示したという報告に、主要な医学大学も興味を示しはじめているのだ。
クラスターバスターズの代表、ウォルドさん。LSDとシロシビンは規制薬物であるため、彼はこの治療方法の研究のために法律を犯しているという事実がある。ウォルドさんは、乾燥シロシベ・クベンシス、1-1.5グラムが、多くの患者に効果がみられる投与量だという。これは、マイルドな倦怠感や若干の明るい色が見える程度の量であり、この量なら、幻覚や現実離れした思考にはおちいらない。LSDやシロシビンを使用するのはあくまでも治療のためであり、ハイになるためではない、と会議の参加者は口をそろえて言う。彼らはみな、最初は違法な薬物を試すことに抵抗があったという。
会議に参加したハーバード大学のハルパーン医師は、サイケデリック体験がおきない程度の量で治療効果が出るという事実に当惑し、BOL(2-Blomo-LSD)を用いた研究を始めた。BOLは、LSDによく似た薬物だが、サイケデリック効果はない。新薬が市場に出回るまでには何年もかかるし、BOLがどこまで治療に効果的かはまだわからない。それまでの間、群発頭痛患者たちは痛みを和らげるために、しかるべきことをするだろう。たとえそのために法を犯すことになっても。
"Inside LSD "
2009年
50年前、LSDなどのサイケデリックスは最先端科学として有望視されていた。しかし、この強力なドラッグがいったん研究所から逃げ出すと、悪名高いストリートドラッグに変身してしまった。今日、科学者たちはふたたびLSDを見直しはじめている。
グミキャンディにLSDを染み込ませて箱に詰めているドラッグティーラー、仮名アリスはサイケデリクスが大好きだ。なぜ大勢の人が法を犯してもLSDを欲しがるのだろうか?
LSDのセラピー効果を信じるセラピストがいる。患者デニースは、人間関係とクリエイティビティの問題に取り組むために300ドルの極秘サイケデリックセラピーセッションを受けている。
薬理学者のデイビッド・ニコルスは、麻薬取締局から許可を得ているLSD研究者・製造者。
激痛を伴う群発頭痛の発作。LSDやシロシビンが症状の緩和に効果があることがわかり、ハルパーン医師らはブロモと呼ばれる幻覚性のないLSDを使用して実験をしている。今は政府の支援がないが、よい実験結果が集まればいずれ処方箋薬として合法化できるだろう。
1938年、偶然LSDを合成した化学者ホフマンがその5年後、世界ではじめてのLSDトリップをする。当時、原子爆弾の開発が進行中だったが、LSDもそれと同じくらいの威力で頭を爆発させた。ホフマンが世界中の精神科医に無料で送付したLSDは、アルコール依存症や自閉症などの治療、研究に使用された。
カリフォルニアでも当時大学院生だったジェイムズ・ファドマンらによる、数多くのサイケデリック・セッションが行われた。新鮮な視点と自由な発想で、さまざまな分野の問題解決に取り組んだが、60年代後半、政府がLSDを規制すると研究も中止に。
しかし今日、研究者たちはふたたびLSDを人体へ投与する実験を再開した。
たとえ短期間の使用であっても、精神が崩壊することもありうるLSDのバッドトリップは、精神病の症状とよく似ていることから、ニコルスはマウスにLSDを与えて精神病の研究に役立てている。
がん患者のアニーは、チャールズ・グロブ精神科医の終末期医療研究の被験者。多くの末期患者は死の恐怖と不安感に圧倒されており、また大量の鎮痛剤を投与されるため、人生を楽しむことを制限されたり、自分らしくある感覚が曇ってしまう。医師の立会いのもとでシロシビンを服用したアニーは、人生を見つめなおし、信念を取り戻すことができた。グロブは、許可を受けた安全な環境で使用できれば、サイケデリックスは大きな可能性を秘めた薬だという。
LSDはこれからどのような道を歩んでいくのだろうか?治療の手段になるのか、それとも間違った使い方をされ続けるのだろうか。それはまだわからない。
"Hallucinogens Have Doctors Tuning In Again(もう一度、医者が幻覚剤にチューン・イン)"
2010年4月11日
マーティンさんは定年退職した心理療法士で、従来のうつ病治療のことならよく知っているのだが、自分自身のこととなるとお手上げで、闘病生活からくる彼の抑うつ状態には、カウンセリングも抗うつ剤も効きめがなかった。そんな彼がジョンズホプキンス大学医学部のシロシビン実験に参加し、65歳にしてはじめてサイケデリック体験をした。
マーティンさんは6時間のセッションで、うつを克服し、娘や友人との関係も修復することができた。これまでの人生でもっとも意義のある時間だったと後に語っている。
1960年代、ティモシー・リアリーが「ターン・オン、チューン・イン、ドロップ・アウト」のスローガンとともに幻覚剤を押し進めた後、規制当局のあいだではタブー視されてきたが、科学者たちは今、新たな視点をもって幻覚剤を見直そうとしている。厳しい手順をふみ、もう一度このドラッグの可能性を研究する許可を勝ち取ったのだ。
今週、過去40年で最大の幻覚剤カンファレンスがカリフォルニア州で開かれる。シロシビンやその他のサイケデリックスを用いた、うつ病や、脅迫性障害、PTSD、麻薬・アルコール依存症などの治療に関する研究が話題にされるだろう。
宗教関係の人物や瞑想者がしばしば報告する啓示体験と、幻覚剤による体験との類似点に強い関心をよせる科学者も多い。マーティンさんのうつ病が治ったように、自己と他者の境界が消え失せる体験をした後、人生観が明るくなったという例は珍しくない。シロシビン実験を行ったローランド・グリフィス教授は「人間の脳はあたかも「無境界」的な体験をするべく仕組まれているかのようだ。もしかしたらそれは人類の進化上の利点なのかもしれない」と言う。
"Hallucinogens could treat ailments(幻覚剤で病気を治せるのではないか)"
2010年4月23日
かつては狂気への片道切符と呼ばれ恐れられたマジックマッシュルームやLSDが、現在、病気を治すための真面目な医薬品として議論されている。カリフォルニア州サンノゼで開かれたサイケデリックドラッグ会議には世界中の研究者が集まった。
幼児虐待を受けたサラは、高校生のころから使いはじめたエクスタシー(MDMA)が、明るい人生を取り戻すのに役だったと言う。精神科医のマイケル・ミットホーファーはFDAの許可を得たうえで、PTSDの治療にMDMAを用いる研究をしている。
しかし、サイケデリックスの有効性を裏付ける科学的な文献の不在を理由に、疑問を投げかける専門家もいる。
"Ecstasy 'may help trauma victims’ (エクスタシーがトラウマを癒す?)"
2010年7月19日
PTSDを患う患者へのセラピーを成功させるのにエクスタシーが役立つ可能性があるとアメリカの研究者が言っている。20人の被験者を対象に行った実験が示すところでは、エクスタシーの使用は安全で、心理療法の効果を上げるようだ。アメリカのチームは、退役軍人を対象に、より大きな規模の実験を実施する許可を得たが、先の実験結果を確実なものとするには、さらなる研究が必要であることを強調している。
この研究を率いる精神科医マイケル・ミットホーファーは「PTSDのセラピーではトラウマになっている事件の状況を思い出す必要がありますが、さまざまな理由から患者が取り乱してしまったり、あるいは感情が麻痺していたりして、うまくいかない場合があります。MDMAを使うと、セラピーを受けるのに適した状態になり、トラウマの処理に取り組みやすくなるのです」と言う。
彼のチームは、MDMAセラピーを受けた患者が、後に遊び目的でドラッグを使用するようになる傾向を高めるかもしれないと考え、患者の追跡調査もしているが、現在のところは問題ないという。
キングス・カレッジ・ロンドンのPTSD専門家は、結果を確定するには研究数が少ないことを指摘し、薬物乱用は精神的な問題と関係しているため、数多くのデータを確かめないことにはMDMA療法を推奨できない、と警告している。
"Psychedelic Drugs Show Promise as Antidepressants(抗うつ剤として見込みのあるサイケデリックドラッグ)"
2010年8月19日
人体・動物用麻酔薬であるケタミンは、その副作用に幻覚作用があるため、しばしば乱用の対象にされるが、慢性的なうつ病患者の症状を素早く和らげることもあり、研究によりその理由もわかりはじめている。最近の研究結果は、サイケデリックドラッグが鬱々とした霧をクリアにする新薬になりうることを裏付けるものであった。
イェール大学の脳神経学者ロン・ドゥマンは、ラットを用いた実験で、ケタミンが脳内の生化学的経路(mTOR)を刺激し、前頭前皮質(人間の思考や性格に関連する部位)の神経活動を高めることを発見した。度重なるストレスを受けたり抑うつ状態を経験すると、この部位の活動が弱まり、その結果、うつ病患者の中には、健康な人よりも小さな前頭前皮質を持つ人がいる。ケタミンはこれと逆の働きをして、うつ病を妨害したり反転させる効果がある。
ケタミンは自殺リスクを減少させるとして有望視されており、双極性障害や依存症治療への有効性を調べるため、 現在、人体実験を進めている。
けれども、幻覚などの副作用があるため、ケタミンなどのサイケデリックスをそのまま医薬品として製品化することは考えにくい。製薬会社は、同様の働きをするが、幻覚や精神を曲げる作用のない、代替物質の開発に関心をよせている。