サイケデリック・ケアサービス運営マニュアル


boom

とある夏休み。今日は待ちに待った野外フェス。仲良しの友人たちと意気揚々と会場に乗り込む。友人のひとりがLSDを持ってきた。これを食べると忘れられない夜になると言うので、みんなで食べる。30分後、なんか効いてきたみたいだ。音楽が大きくなって、光がキラキラしている。手のひらは汗ばんで、心臓の鼓動はどんどん早くなっていく。トイレに行こうと思い、友人と別れて一人で歩いていると急に自分がどこにいるのかわからなくなる。とてつもない孤独感におそわれる。目眩がしてその場に座り込む。変なものを食べてしまったのかもしれない。毒だったのかも? 死ぬのかも? 見回すとみんながこっちをチラチラみながら何か耳打ちしている。俺の様子が変だから警察を呼ぼうとしているのか? それとも俺を殺すための作戦を練っているのか? そうかあいつらが毒を盛ったのか。もう誰も信じられない…。

こんな経験をお持ちの人もいるだろう。そんなときはサイケデリック救急室へ駆け込めばよい。研修を受けたやさしいスタッフがあなたをお待ちしています。

不慣れな巨大フェスティバルの会場、すごい人ごみ、大音量の音楽、新種のドラッグや不純物の混じったドラッグを摂取して、混乱したり、圧倒されてしまうことはよくあることだ。難しいトリップは必ずしもバッドではない、ということはかねてからエンセオーグが主張してきたとおり。安全で安心できる環境と、ジャッジせず、理解してくれる人の存在があれば、病院への搬送や投薬をすることなしに、難しい体験を有意義な自己成長の機会へと変容させることができると信じる人たちによって運営される、ハームリダクション・サービスがある。ブームフェスティバルのKosmicare UKや、MAPSがスポンサーするZendo Projectといったボランティアグループだ。砂漠のオアシスのようなやさしい空間で、興奮しすぎた人を落ち着かせてくれる。

そんな、コンサートや音楽フェスティバルにおけるサイケデリック・ケアサービスの運営マニュアル”The Manual of Psychedelic Support”が出版された。ケアサービスの倫理規定やボランティアの研修方法、ケアスペースに用意しておくべき物、法的な問題への対処方法、アフターケアにいたるまで、実践から得た知恵を交えた実用的な情報が大変詳細にまとめられていて感心する。クリエイティブ・コモンズ・ライセンスの元に出版され、無料でダウンロードできる。
http://psychsitter.com/download-manual/

Kosmicareは、2008年のブームフェスティバルにおいて、スペインのエナジーコントロールと共同でドラッグテストサービスも提供した。LSDだと言われて買ったものが、実はDOCで24時間以上も効いていて困ったなんていうことを事前に防げる。エナジーコントロールはNGOで合法的にストリートドラッグの純度や不純物の混入を調べることができる機関。ちなみにアメリカでは規制薬物のテストは違法のため、このようなテストサービスはできない。

サイケデリック・ケアサービスの存在がドラッグ使用を推進しているととらえる人もいることだろう。しかしいくら厳しく取り締まってもフェスティバルでドラッグを試してみる人は必ずいるし、強烈なトリップに圧倒されている人を無理に病院へ搬送すれば、その人は精神的な傷を残しかねない。理解と思いやりのもとにハームリダクションに努めることこそ、参加者とオーガナイザー双方にとって有意義なフェスティバル体験になる。サイケデリックスに理解のあるスタッフによるケア施設はコンサートや音楽フェスティバルに必須のサービスです。

必要ならサポートが得られることを知らないままにバッドな体験に苦しむ人がいてはいけません。ドラッグ使用によって起こりうる害への対処とその削減に努めることは、コミュニティとしてのわたしたちの義務です。部族集団がお互いの面倒をみて助け合うように、世界は義務を分かち合う場であるとコズミケアで働く人たちは信じています。一体となって呼吸する真のトライブとして、生きた組織としての全体の幸せには、一人一人が健やかであることが必須です。すべての音楽フェスティバルやイベントのプロモーター、運営団体が今後のイベントにおいて、このセーフスペース・モデルの採用を検討してくれたら、それはとても素晴らしいことです。

– Sandra Karpetas(ハームリダクション活動家)

画像は”The Manual of Psychedelic Support”から。

Share this:

コメントを書く